自己啓発セミナーやパーソナルビジネスコーチングで頑張る女性を応援します。また、企業様の女性活躍推進活動のご支援をしていきます。

「カンパニュラの森」 インタビュー Vol.4

「カンパニュラの森」では社会で活躍している女性、女性を応援する企業の方、研究者の方、さらに様々な分野の仕事人にインタビューを行い、これからの女性の働き方や活躍の方法を考えていきたいと思います。

第4回目は、株式会社ポンパドウル渡邊様にお話を伺いました。  (http://www.pompadour.co.jp/               株式会社ポンパドウル 渡邊様 


―会社概要について教えてください。

昭和44年に横浜・元町で1号店がスタートしました。その頃ベーカリーといえば大きな工場で大量生産をするのが主流だったのですが、焼きたてのパンの美味しさを、本格的な製法とサービスでお届けしたいという考えのもと、お店に併設されたパン工房で手間暇をかけながらつくり、その場でおいしいパンをお客様に提供させていただくお店として誕生しました。そのこだわりは、現在北は盛岡から南は鹿児島まで、全国に80店舗となった今でも変わることがありません。このように一店舗一工房を貫くことは実は大変な手間がかかります。例えば全国共通の標準材料を安定的に供給する方法ひとつとってもいろいろと考えなければならないことが多いわけですが、取引先様等のご協力もいただきながら、創業以来のこだわりを守っています。どこかのセントラル工場で作ってお店に運んでくるようなことはしませんし、簡単に作れる冷凍生地は使わずに、一からお店で作る本物のパンのおいしさを追求し続けています。お陰さまでポンパドウル・レッドの“赤い袋”に包まれた焼きたてパンは、多くのお客様から支持をいただき、全国各地へと広がっています。

―今のお仕事について教えてください。

商品開発の責任者をしています。当社では、基本的に横浜の本社で商品開発を行っていて、毎月12日に4~5品、新しいパンを発売しています。その他に、各エリアでの限定品は各店舗で開発をしていまして、例えば百貨店様からの要請で季節のイベントや一周年記念などのイベントに合わせて商品開発を行ったりしています。また最近では地産地消の要望も大きく、土地の特産品を使ったパンの開発もあります。現在開発室のメンバーは6人いて、新規事業立ち上げ準備を担当する者や、パンの世界大会(ベーカリー・ワールドカップ)の日本代表選手もいて、日々訓練に励んだりもしています。また、女性も2名いて、女性の視点を活かしたパンの開発にあたってくれています。
私どものような食文化にかかわる仕事は、男ばっかりではだめですね。女性の感性というのはすごく大事です。お互いにいいところを認めあって、一緒にいいものを作っていければいいと思っています。

―ポンパドウルさんの店舗に行くと、女性がいっぱい活躍されていますね。

当社は、女性がいないと成り立たない仕事です。特に販売や接客ではパートさん・アルバイトさん含めて女性がほとんどで、各店舗の販売責任者は女性も多いですね。
ただ、製造の現場は1割くらいでしょうか。パン作りが好きだからと入ってきても、朝早かったり、力仕事だったりで、実際に続けていくのは厳しいのかもしれません。女性に限らず、製造は厳しい現場なので、人材育成はこれから大きなテーマになっていくでしょうね。

―人の育成についてはどのように考えていらっしゃいますか?

教育については、少しずつ見直しをしているところなのですが、とにかく仕事に興味を持ってもらうことが大事だと考えています。そして、現場でのOJTや、責任者・先輩社員のかかわり方というのが、継続就業に大きな役割を果たすと思っています。パンの製造は、発酵や焼成などの時間に追われる仕事です。それぞれが仕事に没頭しすぎて目を合わさないで時間が過ぎてしまうなんてこともあります。悩み事があっても若い人の方から相談できないこともあるかもしれません。そうなると、人間同士の繋がりがますます弱くなってしまいます。だからこそ、職場の先輩であったり、仲間との会話を大事にしないといけないと思います。

―「魅力ある仕事だよ」ということをどうやって伝えているのですか。

例えば、新人研修では、パンをその場で作ることにしています。短時間製法で作って、焼きたてを食べさせる。そうすると、オーブンから出た瞬間の焼きたてのパンは食べたことがないから、「ああ、凄い」「焼きたてってこんなに美味しいんだ」という顔をする。「これを作っていくのが、みんなのこれからの仕事なんだよ」、「自分が今、感じたことや、感動したことをお客様に伝えてください」ということを言っています。お客様に買っていただいて、家で食べてもらって、また買いに来ていただいて、「これ、おいしかったわよ」と言っていただけるのが我々は一番嬉しいんです。地味だけれど、遣り甲斐のある仕事だと思っています。おいしさをお客様に届けられる夢のある仕事です。それを伝えていきたいですね。
開発室の立場から言えば、自分が作った商品がお客様からどういう反応があるかというのは、開発室の立場からは実際には見えないけれども、店舗の方から聞いたり、販売個数が上がったり、ヒット商品になったりすると嬉しいですし、遣り甲斐を感じますね。

―実地で何かを感じ取る新人研修をやっていらっしゃるんですね。

パンを作る研修は1時間くらいですけどね。現場で作るものとは違う短時間製法(5~6時間)でやっています。パン作りは、「自分の頭で考えれば時間を短縮することもできる」なんてことも考えられるようになれれば、一人前ではないでしょうか。そういう頭の使い方ができれば、会社だけじゃなくても、人生が広がっていくんじゃないかと思います。私自身も自分でどうしたいとか、大きな目標を決めて歩んできたわけではなかったんですが、いろいろなターニングポイントがあって、その都度、自分から動いて道を選んできたように思います。

―渡邊さんがこの道に入られた「きっかけ」は何だったのでしょうか。

大学で農学部を専攻していたのですが、当時はまだ“バイオ”が注目を浴びる前で、研究職というと大学院を卒業しなければ勤め口はない状況でした。周りは就職先として食品の営業職か製薬会社の営業職を受けていましたね。私はというと、飛び込み営業で各家庭をまわる教材営業のアルバイトを6ヶ月くらいしたことがありまして、営業職は自分には無理だと思っていました。そこで、「じゃあ、何か作ることをやってみようか」と思ったわけです。もともと料理も好きでしたし、何か作ったり、絵を書いたりするのも好きだったということがありましたし。たまたま、就職情報誌を見ていて「パン製造」という文字が目に入ったので、応募して、入社することになったのがポンパドウルでした。

―パン屋さんに入ってみて、どうでしたか?

自分に合ってましたね。一日で一日の仕事が終わる。翌日に引きずらない。今日終わって、家に帰って、寝て、また次の日の朝から仕事が始まる。その辺りが性にあっていました。

―入社してから、どのあたりで楽しさを感じるようになったのですか?

始めは「何年かポンパドウルで仕事したら、海外でも行って修行して、自分で店でもやるかな」なんて思っていましたが、段々やっているうちに、仕事が増えてきて、抜けるに抜けられなくなりました(笑)。入社して5年目位で製造の店長になりました。27~28歳くらいのときです。それまで一緒にいた人たちが全員部下になりました。先輩もいるし、年上もいるし、パートのおばちゃんたちもいる。そこからまた大変になりましたね。特に人をまとめていくということでしょうかね、大変だったのは。若い頃からそういう仕事をやってきたので、それなりに鍛えられてきたかなぁ(笑)。楽しいと感じてきたというよりも、いつの間にかはまり込んでいたという感じです。

―辞めようと思ったことはありますか?

そりゃありますよ。身も心も疲れたときもありましたし(笑)。
スランプになった時も苦しかったですねぇ。
私の場合、フランスパンのクープ(切込み)がうまく出なくなってしまったことがありました。どうやっても綺麗に出ない。今までできていたのに突然できなくなる。悩んで、専門書読んだり、先輩に聞いたり、さんざん毎日いろんなことをやったんですが、なかなか抜けられないなんてことがありました。悩みながら何度も何度もやっていて、ある時、急に復活したんです。

―スランプから抜け出せたきっかけは何だったのでしょうか?

結局は手の調子だったんだと思うんです。その工程までの生地の扱い方とかそういうところで何か狂ったんではないかと。パン作りは、自分の手で生地を感じて、きちんと扱ってあげないと、同じようにやっていても結果が全然違うんですよね。今でも現場の若い人たちと一緒に並んでやってみるんですが、同じように手を動かしていても、出来上がりが違ったものになります。「力じゃないんだよね」って言っても自分の感覚で覚えるしかないことなんです。自分で数をこなして、結果を見て、「あ、こうだったね」っていって段々学んでいく。繰り返しがやっぱり大事なんですよ。

―商品開発のお仕事は、ずっと新しいものを出し続けなくてはならないというプレッシャーで大変ではないですか?

別に苦痛ではないですね。苦痛になったら続けられないでしょう、きっと。一人でやるものじゃないし、いろいろな人からアイデアをもらったり、友人と話している中でアイデアが湧いてきたり。同業者じゃなくて、パンの世界と関係ない人たちと話すことも参考になりますよ。

―普段のおつき合いの広さが商品開発に活きているということですか?

活きていますね。友人たちとの会話の中でアイデアのヒントをもらうこともあります。
パン業界ではない人の話って、自分では考えない発想が出てくる。パンの常識に縛られていないから、いろいろ参考になることがあります。「こんなことあったら面白いよね。」とか言われると、「あ、そういう考え方もあるんだ」と思うこともしばしば。面白いですよ。
私自身、普段からアンテナがいろいろなところに立っているのかもしれません。好奇心とでも言うのか・・・。
意識して、ここからアイデアを探してこよう、とか、折角だから仕事にも活かせることを趣味にしようと思ってやっているわけではないです。ですけど、プライベートの時間や趣味を楽しむ中で、仕事にも活かせることがあると感じています。無駄なことって何もないんですね。

―パンの商品開発をするときに大事に思っていることや気をつけていることなどはありますか?

最初の頃は、美味しいものを作りたいとか、人と違うものを作りたいとか、これまでうちの会社でやっていなかったものを作りたいと思っていました。でも最近一番思うことは、お客様がどう感じるかということですね。お客様にとって「これはありなのかな?」「買っていただけるのかな?」ということをいつも考えるようになってきました。
それから、お客様の視点でパンを見るだけではく、パンを通じて、生活を豊かにするお手伝いをしたいと思っています。「こういうご家庭だったら・・・」、という食シーンを思い浮かべて、こんな食べ方もありますよ、という提案をすることにも力を入れています。開発する時には、ビジュアルも大事にしていますし、「あ、美味しそうっ」て、感じてもらえる大きさや形なんかも色々考えます。あと、子供のために買っていかれるお母さんの気持ちを考えたり・・・。食べ方や食シーンをイメージできる提案は、店舗のアイデアも取り入れてやっています。
新しいものを作る時っていうのは、苦労しないといいものは作れないですよ。パンの開発の仕事は、何度も作って自分で食べてみてといった試行錯誤の繰り返しです。商品開発には正解とか終わりとかはないわけだし、また、そうでないとつまらないですね。

―パン、広くは食べ物に関係する仕事をすることで思うことはありますか?

食べ物というのは、人間の生活の中で重要な役割を果たしていると思うんです。
食べるということは生きるために重要な行為ですが、その行為に更に、「食べる喜び」だったり、「コミュニケーションの場の創造」といった付加価値を付けていくことができると思うんです。
食べ物を囲んで人間関係やコミュニケーションが始まったり。あと、美味しいものを食べるときは、誰でも幸せになれますよね。本来、食べることって楽しいことだと思うんです。
なので、人々の食生活の中で私どものパンがどういう役割をしていくことができるか、そういうことを考えています。
最近の食生活の中では、パンは一日に一回くらい、どこかには登場してくるのかなと思います。その時、私どもが作ったパンが、家族のコミュニケーションとか人間関係の間にあるものとして、人間関係をつくるきっかけになればいいと思っています。例えば、それがパンを通して何か会話が生まれるとか、そういうことでも大きな意味があると思います。
先程、パンを通じて生活を豊かにするお手伝いをしたいという話をしましたが、自分の仕事も、どこかの誰かの人生や生活を豊かにする一助になっていたらいいなと思っています。

―貴重なお話を、ありがとうございました。

 

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